60点のマネジメント⑤ ~PDCAを活用する【マネジメントできないマネージャーたち ~介護経営の陥穽(おとしあな)~Vol.30】

公開日:2026年3月2日

本記事は、人材開発部によるマネジメント連載企画「マネジメントできないマネージャーたち ~介護経営の陥穽(おとしあな)~」のVol.30です。(Vol.1から読み始める場合はこちら

60点のマネジメント⑤~PDCAを活用する

PDCAというフレームワーク

フレームワークとは「枠組み」を意味する言葉で、仕事を進める際の課題の洗い出しや分析だけでなく、マネジメントにも役立つ。

介護現場の身近な例でいうと、PDCAサイクルが有名だ。Plan(ケアプラン)⇒Do(ケアの実行)⇒Check(実行したケアの振り返り)⇒Act(ケアの改善)という流れで介護品質を管理する手法として、知らない人はいないだろう。

筆者自身は、PDCAというのは真上から見れば「サイクル(循環)」だが、横から見れば螺旋階段のような「スパイラル」になっていると勝手に考えている。1巡目最後の「Act(改善)」から2巡目最初の「Plan(計画)」に移る際には、何らかの形で品質などが良くなっているはずだ。そうであれば、そこでステージが1つアップしていると思うからである。つまり、最初のPDCAが1階、次のPDCAは2階ということになる。

なぜわざわざこのような話をするのかといえば、PDCAのプロセス中では、1階から2階に上がるこの部分のCheck(振り返り)がいちばん抜けやすく、結局Act(改善)もうまくいかないことが少なくないからだ。

それは、計画と実行の照らし合わせが十分に行われていないことを意味する。照らし合わせが不十分では、改善すべき点が見過ごされてしまう。だから当然、Act(改善)もうまくいかなくなる。

PDCAの落とし穴

 この連載で繰り返し述べてきたように、マネジメントとは、自分で直接実務を行うのではなく、自分以外の人が実務を行うことを間接的に管理するものである。管理者と職員が仕事の目的を共有し、その目的を実現するための計画を立てる。職員は、その計画通りに実行していくという流れだ。だが、ここに落とし穴がある。

計画はその通り実行され、達成されることになっているが、あくまでも「ことになっている」に過ぎない。計画を立てた以上、その通りに職員は実行してくれると管理者は思っている。いや、そう思いたい。だが、それは「計画通り実行されているだろう」という期待でしかない。ほんとうに計画通り実行されているのかどうかは、実務者から報告を受けて、その都度進捗を確認しなければわからない。

そこでCheck(振り返り)が必要になってくる。計画に対する実行の進捗状況を確認して、計画通りに進んでいなければ軌道修正をかける。それによって、はじめて実行内容を計画に近づけていくことができる。

仕事というものは、ほとんどの場合、計画通りには進まない。必ず何らかの不具合や不測の事態で滞る。ということは、できるだけ早くその不具合や不測の事態に気づき、軌道修正をしなければ、ほぼ間違いなく不本意な結果に終わる可能性が高いということだ。計画の成否を分けるのは、Check(振り返り)とAct(軌道修正・改善)であるといっても過言ではない。

振り返りも計画化する

ところが困ったことに、この重要な振り返りが行われないことも案外多いのだ。それは、振り返りが計画化されていないからである。計画化していても忘れてしまうことがあるのに、計画化すらしていなければ、わざわざ立ち止まって振り返る手順が抜けるのは、ある意味当然のことかもしれない。

夏祭りの準備を若手に指示するとき、事業所内研修の講師をリーダーにお願いするとき、フロアの人事考課を主任に頼むとき、業務改善プロジェクトのアイデアを募ったとき、新卒のOJTをエルダーに任せるとき、何らかの仕事がスタートしたら、それと同時に「振り返る日」も決めてカレンダーに書き込んでおく。それだけでも、振り返りをスルーしてしまう可能性は減る。

振り返り日に振り返ることで、問題が見つかり、軌道修正する機会ができる。夏祭り開催日に追加の駐車場を近隣に確保する件で若手が躓いているなら助け舟を出す。事業所内研修のレジュメ作成が遅れているようならアドバイスする。フロアの人事考課は締切日までに提出するよう主任に念押しをする。業務改善プロジェクトのアイデアの集まり具合が悪いようなら、追加で参考例を書面で周知するよう指示する。新卒のOJTでうまくいっていない点がないかエルダーに尋ねる。

「振り返り日」の設定で、確実に振り返りを行える確率が高まり、振り返りを行うことで軌道修正が可能になる。そして計画達成の確率も高まる。「改善」以前に、まず「振り返り」の確実な実施に意識を向けることが重要だ。

(Vol.31へ続く / 2026年4月初旬公開予定)

Writer
柴垣竹生
柴垣 竹生 / Takeo Shibagaki
株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 人材開発部 部長
兵庫県立大学大学院経営研究科(MBA)講師、公益財団法人介護労働安定センター 雇用管理・人材育成コンサルタント、大阪市モデル事業「介護の職場担い手創出事業」アドバイザー、日本介護経営学会会員

1966年大阪府生まれ。大手生命保険会社勤務を経て、1999年に介護業界に転じ、上場企業および社会福祉法人において数々のマネジメント職を歴任。2019年より現職。マネジメントに関する講演実績多数。近著に『老いに優れる』(社会保険研究所)、『介護現場をイキイキさせるマネジメント術』(日本ヘルスケアテクノ)がある。