介護保険制度とその方向性③ -マクロ的視点を持つことの重要性-
株式会社エクセレントケアシステム執行役員(「品質管理部」)の坂本と申します。EX Magazineを担当するようになって11回目の掲載となります。前々回よりマクロ的視点にたって、介護保険制度や今後の改正に対してどのように対応していけばよいか、その中で品質をどのように考えていけばよいかについて、皆さんと一緒に考えるための検討材料の提供を主眼に述べてきました。その結果、引き続き今回も、介護保険制度や介護報酬請求の仕組みとその解説の回となりましたが、前々回でお示しした我々が介護サービスの提供とともにその品質を向上させるためには、介護保険制度や介護報酬請求の仕組みを理解し、そのうえにサービス品質は成り立っていることを認識することを前提に、介護サービスを提供する指定事業者だけでなく利用料を支払う利用者にとって、この介護保険制度や介護報酬体系はわかりにくく算定の根拠が不明確なことを確認することが、より丁寧なサービス提供、品質向上に繋がると思います。
そのようなことを念頭に、前回のテーマの後半部分として、加算・減算項目について述べたいと思います。
「介護報酬体系」の概要
1)加算・減算項目
各介護サービス費の代表的な加算・減算項目は、図表1に整理しています。それによると、2018年4月時点で居宅サービスは加算項目が合計223項目、減算項目が合計58項目であり、支援サービスは加算項目が合計13項目、減算項目が合計2項目となっています。また、施設サービスは加算項目が合計97項目、減算項目が合計29項目であり、地域密着型サービスの加算項目が合計169項目、減算項目の合計が42項目となっています。加算項目は、①サービスの質を向上させるために職員数を基準より多く配置することによる加算や他の事業所や機関、専門職との連携を実現することによる加算、②介護保険本来の目的である自立支援や自己決定支援、要介護・要支援状態の維持・向上の成果による加算、③公平に介護サービスを提供するために利用者がより重度や認知症であった際に労力や時間を割いて対応した場合や時間外での対応、緊急時の対応や遠方の利用者への対応、入浴などの要望に対応した場合の加算、④各専門職がもてる専門的知識や技術を使って介護サービスを提供した場合の加算に分類することができます。
一方、減算項目では、①運営基準や施設基準、人員配置基準を満たさない場合の減算、②介護サービス本来の目的を達成できていない場合の減算、③一度に多くの利用者にサービスを提供することにより本来のサービス水準の達成が難しい状況に陥る場合の減算に分類することができます。
図表1 各介護サービス費の加算・減算項目
注:括弧内は、算定回数を表示(「1回」はサービス実施ごと、「1日」は1日に1回、「1月」は1月に1回を意味する)している。
出所:つしま医療福祉研究財団(2018)*1より作成
以上のことをもとに、代表的な加算・減算項目の特徴を効果別に分類・整理すると、図表2のようになります。
図表2 各介護サービス費の加算・減算項目効果とその分類
注:〇〇〇〇は適用される介護サービスが表示される。
出所:つしま医療福祉研究財団(2018)*1より作成
以上のことから、介護サービスにおける加算・減算項目には、例えば、「各専門職がもてる専門的知識や技術を使って介護サービスを提供した場合の加算」のように、本来図表2で示した介護サービス本体の価格である「合成単位数」に含まれるものもあり、加えて多くの加算・減算項目数が設定されています。このことは、介護報酬が複雑な構造であることを示すものであり、提供する指定事業者にとって、提供されるサービスに対する利用料を支払う利用者にとってわかりにくく加算・減算項目設定の根拠が不明確なことが、介護サービスにおける加算・減算項目の特徴といえます。
「介護報酬体系」と品質と「説明責任」
今回は、加算・減算項目の現状を確認するとともに、その特徴を効果別に分類していました。効果別に分類することで、ある程度加算・減算の機能がより明確に分かりやすくなったものの、我々指定事業者ならまだしも利用者にとって依然複雑であり、算定根拠が曖昧であることから、納得の上で介護サービスを受けられている利用者はそう多くはないことが想像できます。
そのような状況のなかで、我々は品質を考慮した各利用者にとって最善の介護サービスを提供しなければなりません。そのようなことを考える時、各介護サービスが生み出される算定根拠を把握した上で、「説明責任」を果たし、利用者一人ひとりに丁寧な対応をすることが、サービスの質向上の近道になるのではないでしょうか。
毎月1回投稿してきたコラムも、次回で1年が経ちます。次回は、今までの内容を振り返り、今後の品質のあり方について考えてみたいと思います。
<脚注・参考文献>
*1 つしま医療福祉研究財団(2018b)『介護事務講座テキスト2 算定の方法』ソラスト
株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 品質管理部 部長
川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 非常勤講師、川崎医療福祉大学大学院 医療福祉マネジメント学研究科医療秘書学専攻 非常勤講師、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟国家試験合格支援委員会委員(科目幹事)、公益社団法人岡山県社会福祉士会担当理事、第三者評価委員会委員(評価調査者・事務担当)、一般社団法人日本レセプト学会理事、社会福祉法人弘徳学園評議員、NPO法人晴れ アドバイザー
病院の事務、通所介護の生活相談員を経験、川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科副学科長を経て、2024年より現職。福祉サービス第三者評価の評価調査者を担っている。医療福祉制度に関する学術論文多数発表。分担執筆『障がい福祉のすすめ』第5章(学文社)などの著書もある。川崎医療福祉大学創立30年記念「未来の医療福祉のあたり前を考える」論文部門最優秀賞受賞。博士(社会福祉学)・修士(社会学)ともに佛教大学、社会福祉士。

